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言葉の巡礼/京都

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 カラスは骨を突いていた。白く脆い私の大腿骨が衝撃に耐えられず崩れてゆくのを見ている、目が覚める。身の危険を感じたので新しく始めた勤務先に退職を願い出る。辞める理由なんて何でもよかったけれど、誰も傷つかないので夢で見た妙に艶やかなカラスにしておく。明け方にぼんやり食べるコッペパンはいつもより美味しい。

 

 向かいの家の子供が弾くピアノの音を聴きながら煙草を蒸していると、勤務先から着信。曲が終わる頃には、その連絡もなくなった。顔も知らない相手の演奏の上達を感じる度に、月日が流れる早さに頭がくらくらしてくる。3年の間にあの子は猫踏んじゃったからは遥か彼方に、私はアルバイトを3回変えた。

 

 生活の糧を得ることや専攻分野からはかけ離れたことをしたい。丸善で目が合った数IAの問題集を購入する。17歳の頃に留学先から帰国して最初に受けた学力テストに2点がついた時から、友人にはなれないと諦めていた公式たちにこわごわ握手を求めた。彼らは理路整然と規則に従ってそこにいて、美しい道の先で必ず解と出会える。

 

 霞に味をつけるなら何がいいか考える、抹茶塩一択。