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言葉の巡礼/京都

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 傘を携帯しない友人と、そんな彼の紹介で知り合ったチャーミングな友人と中華を食べに雨の木屋町。帰りしな、ガボールで煙草を燻らせながらぽやぽやとお茶をした。山奥の英会話教室で働いている間に流れる時間と、いっとう居心地の良い関係性の友人たちとたゆたう時間、どちらも等しく3時間なのにこうも違う。余韻に浸りつつ帰宅。

 

 NYで食に関連した仕事に従事する人々をフォーカスした本を読んでいて知った言葉「プルートスのマドレーヌ」が堪らなく好きで、人に会う度に伝えている。マルセル・プルートスの小説「失われた時を求めて」の中で主人公がマドレーヌを食べたことを契機に、幼い頃の記憶がありありと思い出されたエピソード。思い入れのあるものを食べることで、一気に過去へと引き戻される誰しもが持つ思い出の味。「想起させる」の一言に納められる言葉に、こんなにも美しい装飾が存在している。

 

 夜毎世界の滅亡を描いた映画を観ている、五度目の壊滅的な被害を地球が受けた。

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 吹雪が行き場を失くす駅のホーム。17歳だった友人と私は、お互いの失恋に涙を流しながら「私たちが付き合えればよかったのに」と環境とタイミングを呪っていた。月日は流れ、そんな彼女からiHerbでコンビニ決済を初めて選択したと連絡。iHerbの支払い方法はいっとう煩わしい、これはどうしてもきちんと伝えたい。

 

 気がつけば会話はカレンダー上を容易に横断している。年末に帰省した時に、プレゼント交換をする約束をして電話を切った。久方ぶりに話をした友人は、高校時代に悩んでもがいてイトーヨーカドーの隅でふたりラーメンを啜っていた頃から何も変わっていない。だけれど、お互いが確実に光のある方へ進めていることを実感する夜。

 

 浮き足立つ気持ちを抑えられず、通話が終了した後に映画を一本観た。巨大台風に人々が翻弄されてゆく。あらすじにあった「人々がシェルターに逃げ込むなか、あえて竜巻の渦に向かって突っ走るプロのストーム・チェイサーたち」の一文に笑った。履歴書に書きたい、職業はストーム・チェイサー。

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 代理講師として山奥の英語教室までやって来た先生に、受付として雇われた私がレッスンを受けた。閑散期だから、2日前に上司になったばかりの人の繰り返し弾む声を背景に恐る恐る彼と向き合う。チョコレート色の綺麗な肌、雨粒みたいな瞳。

 

 「今日の気分は?見たらわかるけれど」「もちろんナーバスです、いきなりパーソナルな話をするのは少し緊張するから」「大学では何を専攻しているの?」「神学です、特にキリスト教」「関心があるトピックは?」「アメリカ南部の教会コミュニティとLGBTQの関係性」「なんだって!?僕らは今すぐに友達になれるね」

 

 ルイジアナからやって来た美しい人と、クィアな連帯を深める昼下がり。彼にいっとう好きな映画と音楽の話をし終える頃、雨は止んでいた。