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言葉の巡礼/京都

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 昨日にUKから届いたTan Franceのメモワールをむさぼるように読んでいたら、窓から差す明かりに目が眩む。登校してゆく子供たちの足音と、隣家から漂う味噌汁の香りに包まれて深く眠る。起きる頃にはまた子供たちの笑い声が近づいてきていた。

 

 優しい友人が台風に備えて備蓄をするよう連絡を寄越してくれたので、嵐の前の気怠さと一緒にイズミヤへ。お徳用マフィンにオレンジジュースとチョコレートバーにチーズと煙草、お誕生日会みたいなラインナップ。帰りしなに見上げた空は不摂生な血の色をしていて、地獄があるとすればきっとあの先だと確信した。

 

 締め切った部屋の中、低血圧のせいで頭にはメインクーンが数匹乗っているかのような痛み。ずっしりとのしかかる影に負けないよう、ラテン・ハウスの曲縛りでプレイリストを製作する。DJを始めようとしている大学の友人とプレイリストを交換したり、静かに密な夜。

 

 平安を、明日に平安を。