FJCP59+BF

言葉の巡礼/京都

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自転車での登校中に市バスに轢かれかけて以来、信じられるのは自分の脚だけだと思っている。この信仰は京都の街では密に守られていた。一駅でも二駅ぶんであろうと、今日もご盤の目の上を靴底を擦り減らし進んでゆく。 3週連続で大阪へ行く用事ができ、阪急…

97

穴という穴から音楽とチョコレートを流し込む容器になっていた。

89

昨日にUKから届いたTan Franceのメモワールをむさぼるように読んでいたら、窓から差す明かりに目が眩む。登校してゆく子供たちの足音と、隣家から漂う味噌汁の香りに包まれて深く眠る。起きる頃にはまた子供たちの笑い声が近づいてきていた。 優しい友人が台…

83

早朝からカツを揚げる。夢の中で私はどこか遠い異国のカフェにいる。隣にはカツとじがのった蕎麦を啜る老紳士。あんまりに美味しそうで、目覚めた瞬間に私も同じものを注文すべきだったと後悔が襲う。油を扱うにも出汁を取るにも快適な季節が訪れて嬉しい。 …

79

愛、そして力。

73

ベランダで煙草を燻らせていたら、隣家から漂うシチューの香りが鼻を掠めました。2日目の朝の少ないルウで、ちみちみと食べる冷やご飯がいっとう好きです。 そんな冷え込む日には私が知らないことを知りたくなります。オススメの本や今日に食べたものでも教…

71

「恋人に求める条件は、フェミニストで選挙へ行く人」(マンゴージュースとココナッツミルクにパッションフルーツソースのドリンク)「性を通してでなく個を意識し対等に接せられる人が素敵だと私は思う」「珉平焼の釉薬の色、どうしてこんなに美しいのだろう…

67

「たくさん寝たいから私の集合時間を遅らせて」とLINEができる間柄の人たちと、大阪へ遊びに行く。四ツ橋のワッフル専門店で未知の食感のベルギーワッフルを食べていると、余計にお腹が空いてきた。友人と顔を見合わせて隣接するうどん屋に入るか否か、真剣…

61

神宮丸太町のメトロから熱気と友人と帰宅したのが午前4時、そして3時間後の私はスーツに着られて阪急電車に揺られる。 「この瞬間を、この音楽を好きだと思う気持ちを忘れたくない」音は祈りに変わり体を駆け巡る、骨に刻みつけるように四方からリズムは降り…

59

息を吸って吐いてアルバイトを辞めた私に、NetflixとAmazonプライムは優しい。夜に友人とクラブメトロへtofubeatsやokadadaが出演するイベントに行くので、仮眠をしつつ映画を観ていた。 MacBookの前に横たえているとせり上がってくる退屈に負けないように、…

53

点のみでしか見えていなかった物たちが、線となり高さと厚みを帯びてゆく感覚。昨日に道で偶さかすれ違った人文地理学の教授に「また研究室に遊びに来てください」と言われたのを、律儀かつポジティブに捉え早速お邪魔した。久方ぶりにこれまでの学びの報告…

47

明け方に茹で卵を調理しているはずが、沸き立つ虚無を眺めていた。

43

振り向けない程の右肩の痛み、視野が草食動物並に広がった気がした。原因は堕落の淵でクィアアイを日がな観た上に、寝落ちしたせい。自由と自律の履き違え甚だしく、メソメソと母親に電話をしたのが一昨日のこと。愛知に暮らす彼女より、祖父が病院で貰った…

41

新聞配達のバイクが遠のいてゆく音と共に眠り、午後に郵便配達車のエンジン音で目が覚める。煙のように辞めた以前の勤務先で、何喰わぬ顔をして働く夢を見た。 NZに暮らしていた頃からのいっとう大切な友人たちと、近所のレストランで夕食。食べたいものを素…

37

菜食主義になれるか否かを考えていた。人文地理学の講義を受けた日から、環境問題と食肉の関係が頭の片隅を駆けている。常に食べたいと思う、地球最後の日にも思い浮かべるであろう食べ物たちを手帳に綴っていた。 メイトーのかぼちゃプリン、フムス、クリー…

31

蒸すアパートの浴槽でかぼちゃプリンを食べ外に出たら終末世界、そんな夢を見た。

29

久方ぶりに会う友人は、イッセイミヤケのプリーツパンツがよく似合っていた。神秘的な力(=絶えず流れる音楽と人をダメにするソファ)で帰巣本能を惑わす彼の魔窟から、何とか日付が変わる前に抜け出す。帰宅しクィア・アイを泣きながら観ていると朝。 岡崎の…

23

昨日の私、強い意志を託してくれてありがとう。目覚めて5秒も経たぬうちに、水晶鶏づくり。寝惚け眼の頭にSigur Rosの曲を刺しながら、胸肉をひたすらに削ぎ切りへ。片栗粉をまぶし、沸き立つ鍋に入れてゆく。茹でる過程の素晴らしいところは、火が通ると自…

19

古代イスラエル宗教史から始まり礼拝学で終わる、実に神学部らしい一日。夏の休暇の間に、ダルマ落としみたくアラビア語に関する記憶が欠落していて驚く。全てはインシャアッラー、とも言っていられない。 愛しのギッフェルを買いにベーカリーへ行くと、見知…

17

女の子は何でできてできているの?今日の私は間違いなくギッフェルとギッフェルにギッフェル。大学のベーカリーで半年ぶりに出会えたいっとうお気に入りのパン、幸福の集合。 明日の私が無事にまたギッフェルを食べられますように、幸せは鷲掴みで。

13

気候変動の煽りを受けたティラノサウルスがその巨体に不釣り合いな両の手で暖をとろうとしている頃、私は地方都市に暮らす中学生だった。正確には"不登校になりかけの"が正しい。朝に家を出ても列車のホームまで来ると、足がすくみ動けない。学校とは反対方…

11

カラスは骨を突いていた。白く脆い私の大腿骨が衝撃に耐えられず崩れてゆくのを見ている、目が覚める。身の危険を感じたので新しく始めた勤務先に退職を願い出る。辞める理由なんて何でもよかったけれど、誰も傷つかないので夢で見た妙に艶やかなカラスにし…

7

勤務明けにスタバへ寄る。朝から金太郎飴の切り口みたく接客をしていたので、ドリンクを待っている時に入ってきたお客さんに「いらっしゃいませ」と返していた。ガラス扉の向こうに人が見えれば声を掛ける、私はパブロフの犬だ。 読まなければと思いながら床…

5

明け方からミネストローネを作る。冷蔵庫にあるだけの野菜を、親の仇ほどに切ってゆく。スープというよりは汗をかいたサラダができあがった。最後に中濃ソースを少しだけ回しかけると、味が締まり美味しい。 6回に渡り受講していたフェミニズムに関する講義…

3

鼻を触り続けている。頂にできた白ニキビが気になって仕方がない。新しい職場へ出勤する直前、触れていた部分がついに剥がれ落ちた。3日もすれば新しい皮膚が姿を現わすのだろうけれど、絶えず入れ替わってゆく細胞たちを私の一部と認識してよいのか歩きなが…

2

3時間に渡る講義で5分間の休息さえ与えない教授にはなるまいと胸に誓う。誰しもが酸欠の金魚みたく窓の外へ視線を漂わせようと、彼女は公娼制度について幾多もの時代を横断し続けていた。ひたすらに鞄の中へと忍ばせた144kcalぶんのチョコレートの輪郭を辿り…